毎年この時期になると楽しみなのが、Incrementum AG社による「In Gold We Trust」の最新版のレポートの発表を待つことだ。
貴金属投資に興味のある者であれば誰もが読むべきレポートである。
しかし、異常さがエスカレートし続ける中央銀行の言動や、その反動のようにみられる、一般市民からの鳴り響く声が増す現状をみると、今年のレポートは特に関連深い。
このレポートは無料配布されており、以下のリンクから簡易版または完全版をダウンロードすることができる。非常に優れたレポートで読みやすくまとめられている。
Incrementum AG ウェブサイト – In Gold We Trust 2020 Report (英語)
過去12年間、ロナルド・ピーター・ストファーレと彼のチームの研究を追っているが、彼らの金価格予想は決して大幅な高値思考になることはなく、彼らの分析はいつも様々な関連するデータ基準によって裏付けされている。
今年のレポートも同様であるが、今現在の背景が考慮されている。レポートを読む前にまず以下の抜粋を読んでほしい。
“最近の世界の金価格の大幅な上昇をみると、地固めが始まっているように思える。“
Incrementumチームのアナリストたちによる素晴らしい分析結果は、将来の金価格の大幅な値上げを示唆するものであるが、これは、今後の動きに沿って、またごく近い将来において、その傾向がみられないとは言うものではない。
また我々は、個人的判断による適度な参入価格というものを待って、長く対岸にいること(金投資をしない)を警戒している。これは、中央銀行がマネーの増刷によって解決できない問題はないと信じている時において、損失となりかねない。
興味深い分析結果の一つで、今まで長年金市場を研究してきた中で見えてきたものが、参入者の動向である。 このゆえ、我々は以下の買い手市場のチャートは非常に興味深いとみている。
1:蓄積期 ― この第一段階においては、最も情報を持ち、明敏でコントラリアン投資家が購入する。前段階での動向が下降気味であれば、賢い投資家はこの時点で市場は「悪いニュース」を割引したとみることもできる。金市場にとってこの段階は2013年から2019年6月にあたる。
2:参加期 ― この第2段階では、価格はゆっくりと上昇する。動向を追う者が興味を抱き始め、ニュースが好転となり、メディアやコメンテーターなどが益々楽観視してくる。投機的な興味や取引高が増え、新しい商品が創られ、アナリストの価格指標が上昇する。この段階は、金価格が2019年6月の抵抗ゾーンを超えた後に始まり、今後数年続くであろう。
3:分配期 ― 最終の第3段階は熱狂段階で、低価格時期から参入し蓄積してきた、情報を保持する投資家たちがポジションを減らし始める。メディアやアナリストたちは価格指標を上げ、お互いがより優れていると言い、ムードは「今回は違う」という感情によって形成される。
いつもながら、レポートは賢者の言葉が引用されている。たとえば、以下のようなどうして家族の調和を保つのが難しいのかなどということを示したものもある。
近年の景気後退を思い出すと、アンナ・カレーニア(ロシア文学)の原理が思い起こされる。 レフ・トルストイは自身の画期的な小説の中で述べている:
“すべての幸福な家族は似通っている。不幸な家族は各自それなりに不幸である。”
性的魅力、経済力、子育て、宗教、義理の家族や友人との人間関係など、様々な要因がすべてうまくいってこそ幸せな家族生活というものがあり売るのではあるが、不幸がはびこるのには、 これらの要因のうち うまくいっていないことが 一つでもあるだけで 十分である。つまりは:
• 成功は、多くのプラス要因が必要で、それらがすべて関連されていないとならない。
• 不成功は、単に一つのマイナス要因が必要なのみである。
他に、溢れるたるの複雑さを説明した引用もある:
たるが溢れはじめる要因となる最後の一滴を予測するのは複雑であると知られている。しかし、たるがへりいっぱいまで満たされているというのは明白だ。 過去何年も、世界経済の危うさが増していることが言われ続けている。
最後に、現在のおめでたい回復について:
2008年から2015年にかけて、米国連邦銀行の貸借対照表は0.9兆ドル(96兆円)から4.5兆ドル(484兆円)に増えた。 経済サイクルにおいて、このうちのわずかな額のみが返済されている。 コロナウイルスによる破滅的な経済へ影響に対応するために行われた連邦銀行の最初の方策をうけて、現在の貸借対照表の合計は7兆ドル(754兆円)にまで膨れ上がった。
ここで、疑問があがる:市場での危機はすでに逸らされたのであろうか? 中央銀行や政治家はまた我々を緊急援助するのだろうか?金融経済と一般市場経済はもうすぐ「平常」に戻るのだろうか?長年愛好いただいている読者はおそらくすでに適度な懐疑論が必要であることはお察しであろう。なぜならば、歴史をみると市場破綻は3段階で起こるからである。
- 最初のパニックによる売り出し✓
- 最安値からの回復、別名「Dead Cat Bounce(デッド・キャット・バウンス)」✓
- 悲惨な企業や経済のニュースが発表され、パニック売りによる最安値の気力を弱める再テストX
レポートを読む時間のない人のために、4ページに要約があります!
お楽しみあれ。